日本では、資本金1円で会社を設立できる。一方、外国人が日本に住み、自ら会社を経営するためには、3000万円以上の資本金を求められる場合がある。
会社をつくることと、日本で事業を営むこと。その間には大きな隔たりがある。
日本の会社法では、株式会社や合同会社を資本金1円から設立できる。
独立行政法人日本貿易振興機構(JETRO)も、株式会社と合同会社について、資本金を「1円以上」と案内している。ただし、これは法人登記に必要な最低額にすぎない。
株式会社を設立する際の登録免許税は資本金の0.7%で、最低額は15万円と定められている。このほか、定款の認証や本店所在地の確保、会社印の作成、専門家への報酬などが必要になる場合もある。
事務所の賃料や設備費、人件費、会計費用もかかる。許認可が必要な業種であれば、その取得費用も見込まなければならない。
1円で会社を登記することはできても、1円で事業を始められるわけではない。
会社を持っても、日本に住めるとは限らない
外国人が日本法人の株主や代表取締役になったからといって、日本での居住が自動的に認められるわけではない。
日本に住みながら会社を経営する場合、原則として、その活動に応じた在留資格が必要となる。代表的なものが「経営・管理」だ。
この在留資格の許可基準は、2025年10月16日に改正された。法人の場合、事業規模の基準として、原則3000万円以上の資本金が求められる。
さらに、会社は対象となる常勤職員を1人以上雇用しなければならない。申請者または常勤職員のいずれかには、一定水準の日本語能力も必要となる。
経営者についても、経営や管理に関係する修士号などの学位、または3年以上の経営・管理経験が求められる。
事業計画書は、申請者が作成するだけでは足りない。中小企業診断士、公認会計士、税理士など、所定の専門家による評価を受け、具体性や合理性、実現可能性を示す必要がある。
事業規模に見合った事業所の確保も条件となる。自宅と事業所を兼ねることは、改正後の基準では原則として認められない。
詳細は、[出入国在留管理庁の案内]に示されている。JETROも、日本での事業形態を比較する[公式資料]で、「経営・管理」の取得要件の一つとして3000万円以上の資本金を挙げている。
つまり、外国人が資本金1円で日本法人を設立し、所有することはできる。だが、その会社を経営するために日本に住めるとは限らない。
一見すると矛盾しているようだが、二つの制度は目的が異なる。
会社法が判断するのは、法人として成立できるかどうかだ。これに対し、入管制度では、事業に継続性と実態があり、外国人の在留を認めるに足る規模かどうかが審査される。
3000万円の資本金、税にも影響
資本金の額は、在留資格だけでなく、消費税にも関係する。
新設法人は、基準期間となる過去の事業年度がないため、設立後の第1期と第2期について、原則として消費税の納税義務が免除される。
ただし、各事業年度の開始時点で資本金または出資金が1000万円以上ある法人には、この免除が適用されない。
「経営・管理」の基準を満たすため、設立時から資本金を3000万円とした会社は、原則として第1期から消費税の課税事業者となる。
[国税庁]は、こうした法人について、消費税の申告が必要になると説明している。
一方、資本金を1000万円未満にすれば、必ず免税になるわけでもない。適格請求書発行事業者として登録した場合や、特定期間の課税売上高などが基準を超えた場合には、消費税を納める必要がある。
在留資格を見据えて資本金を増やすと、設立直後から税負担が生じる可能性がある。起業時には、入管手続きと税務を分けずに考える必要がある。
登記は出発点にすぎない
資本金1円の会社は、法的には成立する。
しかし、銀行口座の開設や事務所の賃借、取引先との契約、営業許可の取得では、会社の事業内容や資金、所在地、取引の実態について確認を求められることがある。
登記簿があるだけで、会社の信用や事業の継続性まで保証されるわけではない。
外国人起業家にとって重要なのは、最も少ない資本金で会社をつくることではない。日本で事業を続けるために、いくら必要なのかを事前に計算することだ。
1円は、法人を登記するための入口にはなる。しかし、日本で会社を動かし、経営者が暮らしていくための資金とは別の数字である。
2026年8月18日現在。本記事は一般的な法務・経営情報の提供を目的とするものであり、個別案件に対する法的助言ではありません。
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